9月19日から6日間にわたって、東京・代々木の「東京体育館」で開催された『ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2017』。日本国内で開催される最高ランクのバドミントン世界大会の模様を、小椋 久美子さんがレポートします。
小椋 久美子が見た、今年のジャパンオープン
日本人選手の躍進が目立った今大会
今大会で一番記憶に残ったのは、やはり日本人選手の活躍です。12組もの日本人選手が、それぞれの種目でベスト8まで勝ち残ったのは快挙といえるでしょう。その内決勝に進んだのが3組6名。これも過去最高の成績です。結果的に優勝したのは女子ダブルスの髙橋・松友ペアだけですが、男子ダブルスの井上・金子ペアや混合ダブルスの保木・廣田ペアも惜しくも敗れたとはいえ、それでも準優勝ですから十分に結果を残したといえます。
ただ彼らには、決してここで満足して欲しくないという気持があります。元々ホームである日本で開催されるこの大会では、日本人選手たちはみんなパフォーマンスが上がります。日本のファンの皆さんの前で良いプレーを見せたいという気持もありますし、同じ日本人に負ける訳にはいかないという意地も出てきますので、一つひとつのプレーに粘りが出ます。自分の持てる力に、最後まで諦めないという気持が乗っかるのがこの大会なのです。
もちろん、優勝や準優勝という結果は素晴らしいことだと思いますし、選手たちにとっても大きな自信に繋がると思いますが、大事なのはこの後の大会でも結果を出し続けることです。日本で行われる大会でだけ良いパフォーマンスをするというのではなく、どこの国でも、どんな環境でもコンスタントに結果を残せるような選手になってもらいたいです。コンスタントに勝つことにより、世界の中での自分の位置が分かるし、海外の選手たちにも認めてもらえるようになるので、今回このジャパンオープンで勝てたということを自信にして、その後につなげていってもらいたいと思います。2020年の東京オリンピックに向けての戦いは、もう始まっているのですから。
決勝について
世界最高峰の試合となった、男子シングルス決勝
男子シングルス決勝は、デンマークのビクター・アクセルセン選手と、マレーシアのリー・チョンウェイ選手の、まさに世紀の一戦ともいうべきすごい試合になりました。バドミントン界のレジェンドでもあるリー・チョンウェイ選手にとって、このジャパンオープンは特別な大会だと思います。テクニックもフットワークも完璧で、常に全力プレーで絶対に手を抜かないですし、人柄もまじめで紳士的。日本にもファンの多い選手です。本人も日本が大好きで、毎回この大会では確実に結果を残していますし、実際にこれまで6回も優勝しています。今回7度目の優勝がかかっていたのですが、残念ながらアクセルセン選手に敗れてしまいました。アクセルセン選手は8月に開催された世界選手権でも優勝したばかりで、今回とても勢いがありました。元々攻守にわたってバランスの良いプレーをしますし、身長も高く体格も大きな選手ですが、今日は何だかさらに大きくなったように見えました。試合はフルセットまでもつれ込みましたが、アクセルセン選手のパワフルなプレーに、さすがのリー・チョンウェイ選手も今回はかなわなかったようです。
第1セットの攻防が勝敗を決めた、女子シングルス決勝
女子シングルスでは、世界選手権で金メダルを取った奥原希望選手に期待が集まりましたが、残念ながら準決勝で棄権ということになりました。ただ彼女の今後のことを考えると、今回は仕方の無い選択だったと思います。また、今大会ではB代表の大堀彩選手や髙橋沙也加選手などの若い選手たちの活躍が印象的でした。ただ、両選手とも準々決勝は勝てる試合展開だったので、欲を言えば勝ち抜けて欲しかったですし、奥原選手同様優勝候補だった山口茜選手もベスト8止まりだったのが残念でした。
決勝はスペインのキャロリーナ・マリン選手と、中国のヘ・ビンジャオ選手との対戦となりましたが、この対戦は、第1セット終盤の攻防がすべてだったと思います。一度はゲームポイントを取りながらも追いつかれ、デュースにもつれ込んだ末にマリン選手に敗れたビンジャオ選手の集中力が、そこでプッツリと切れてしまったようでした。続く第2セットは、おそらく1セット目のショックから立ち直れないままに終わってしまったのではないでしょうか。1つのプレーが勝敗を左右する、バドミントンの怖さを感じました。
センターコートの雰囲気に飲み込まれた、男子ダブルス決勝
男子ダブルスでは、当初期待されていた「ソノカム」ペアこと園田啓悟選手と嘉村健士選手のペアがベスト8で敗れてしまいましたが、その相手であるロシアのペアを下した井上拓斗選手と金子祐樹選手のペアが決勝に勝ち進みました。ただ決勝戦は、インドネシアのマルクス・フェルナルディ・ギデオン選手とケビン・サンジャヤ・スカムルジョ選手のペアにストレートで負けてしまいました。やはりこのジャパンオープンのセンターコートという大舞台には独特の雰囲気があり、井上・金子ペアはそのプレッシャーに飲み込まれてしまったように思います。もちろん、インドネシアのペアはかなりの強敵ですし、ネットから浮かない低空戦を得意とする質の高いプレーで決勝まで勝ち上がってきたペアなので、簡単には勝てない相手には違いないのですが、それ以上に世界大会の決勝という空気に飲み込まれてしまい、最後まで自分たちのプレーができなかったのではないでしょうか。本人たちにとってもおそらく消化不良気味の試合だったでしょう。二人ともまだ若いので、できればもっと積極的に、気持ちでぶつかっていってほしかったと思います。ただ二人にとって良い経験になったと思いますので、今回の敗戦を糧にしての今後の活躍に期待したいところです。
世界のタカマツペアの実力を見せつけた、女子ダブルス決勝
髙橋礼華選手と松友美佐紀選手にとって、3年ぶりのジャパンオープン優勝をかけた一戦は、韓国のキム・ハナ選手とコン・ヒヨン選手との決戦になりましたが、結果は2セット連取のストレートで「タカマツ」ペアが勝利。見事2回目の優勝を勝ち取りました。この試合、とにかく二人のコンビネーションが完璧で、終始リズム良く攻撃できていたと思います。レシーブも、守っているのにまるで攻めているような攻撃的なレシーブができていて、崩れることがほとんど無く、まれに崩されることがあってもすぐに立て直しすることで、自分たちのリズムを取り戻していました。とにかく攻守にわたって危うさがほとんど感じられないゲーム展開でした。相手の前衛を守るキム・ハナ選手がスピードを上げて揺さぶりを掛けてきたときに一瞬流れが変わりそうになりましたが、髙橋選手が冷静に判断し、相手の弱点や苦手なところを見極めて的確にスマッシュを決めることで、ゲームの主導権を手放しませんでした。髙橋選手、松友選手それぞれの良さが出た見事な試合でした。
日本人ペア初の決勝進出となった、混合ダブルス決勝
ジャパンオープンではもちろん、スーパーシリーズで日本人ペアが混合ダブルスの決勝に勝ち上がってきたのは史上初めてなので、保木卓朗選手と廣田彩花選手のペアはすごい快挙を達成しました。前評判を覆し、予選から快進撃を続けてきた保木・廣田ペアでしたが、決勝戦では男子ダブルス同様、世界大会決勝という雰囲気に飲み込まれてしまったように思います。準決勝までは動きが良く、勢いのある積極的なプレーで相手を打ち破ってきましたが、決勝では二人とも固くなってしまって動き自体が止まっていました。中国のワン・イルユ選手とファン・ドンピン選手のペアは、緩急だけではなくコースの変化も自在で、前衛を守るドンピン選手のタッチの速さやシャトル処理の的確さ、後衛のイルユ選手の高さとスピードに、保木・廣田ペアは翻弄され続けました。混合ダブルスは、男子や女子のダブルスとはまったく違う試合の組立て方をするので、二人が一つひとつのプレーの精度をもっと上げていかないと、勢いだけでは中国、そして世界では簡単には勝てないと思います。ただ、お互い男子ダブルス、女子ダブルスも組んでいる選手なので、今回の大会は二人にとってとても良い経験になったと思います。特に前衛の廣田選手にとっては、男子との試合経験が女子ダブルスでのプレーに活きてくることでしょう。
優勝選手インタビュー
松友美佐紀 /髙橋礼華ペア
(女子ダブルス優勝)
-
髙橋選手
リオ五輪後に初めて出たスーパーシリーズが昨年のこの大会だったのですが、決勝で負けた悔しさがあったので、今年こそは優勝したいという気持でコートに入りました。今日決勝で戦った韓国ペアも勢いがあったのですが、自分たちのコンビネーションは負けないという気持をしっかりと出して戦いました。
松友選手
海外での大会など、外国語が飛び交う中で試合をすることも多いのですが、今日は競ってる場面でも会場からたくさんの声援をもらって、「ああホームだな」と感じましたし、こんなにたくさんの方に応援してもらえる中で試合ができることは幸せだと思いました。
マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョペア
(男子ダブルス優勝)
-
今回の大会では、全試合を通してとても良くできたと思っています。先週の韓国オープンの疲れも少し残っていましたが、2試合勝ち上がってきた頃には、すっかりペースも取り戻せましたし、特に準決勝、決勝に関しては、エンジョイしてプレーすることができました。正直決勝はもう少し接戦になるかと思いましたが、相手選手たちも少し緊張していたように思えました。韓国オープンでは優勝できなかったので、私たちにとって今回の大会での優勝は、非常に大きな意味を持つ結果になったと思っています。(通訳)
9月24日(日)決勝戦 試合一覧
種目 | 選手名 | 試合内容 |
---|---|---|
女子ダブルス | 松友美佐紀/髙橋礼華(日本) 2-0 キム・ハナ/コン・ヒヨン(韓国) |
21-18、 21-16 |
男子ダブルス | マルクス・フェルナルディ・ギデオン/ケビン・サンジャヤ・スカムルジョ(インドネシア) 2-0 井上拓斗/金子祐樹(日本) |
21-12、 21-15 |
混合ダブルス | ワン・イルユ/ファン・ドンピン(中国) 2-0 保木卓朗/廣田彩花(日本) |
21-13、 21-8 |
女子シングルス | キャロリーナ・マリン(スペイン) 2-0 ヘ・ビンジャオ(中国) |
23-21、 21-12 |
男子シングルス | ビクター・アクセルセン(デンマーク) 2-1 リー・チョンウェイ(マレーシア) |
21-14、 19-21、 21-14 |
大会を終えて、そして2020に向けて
TOKYO2020に向けての大きな一歩として
小椋 久美子【女子バドミントン元日本代表】
1983年三重県生まれ。8歳のときにバドミントンを始める。2000年に全国高校総体でダブルス準優勝、01年の全国高校選抜でシングルス準優勝。三洋電機入社後の02年には全日本総合バドミントン選手権シングルスで優勝。その後、ダブルスプレーヤーに転向し、北京オリンピックで5位入賞、全日本総合バドミントン選手権では5連覇を達成。10年1月に現役を引退。
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