

ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2018
バドミントン選手権大会
小椋久美子さんが現地からレポート!
「ダイハツ・ヨネックス
ジャパンオープン2018」
- 開催日時:2018年9月11日(火)〜16日(日)
- 開催場所:武蔵野の森総合スポーツプラザ
9月11日から6日間にわたって開催された『ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2018 バドミントン選手権大会』。
今回から、2020年東京オリンピックのバドミントン競技会場となる「武蔵野の森総合スポーツプラザ」へと会場を移し、世界ランキング32位以内の強豪選手のみが出場できる世界屈指のバドミントン国際大会として生まれ変わりました。
TOKYO2020に向けての前哨戦ともいうべき本大会の模様を、女子バドミントン元日本代表の小椋久美子さんが現地からレポートします。
2020年の東京オリンピックの会場で行われたジャパンオープン2018

ジャパンオープンは、今年からBWFワールドツアー「スーパー750」というレベルにグレードアップされ、世界でもトップクラスの国際大会になりました。世界有数のトップアスリートによる最高レベルの国際大会をここ日本で見られるなんて、バドミントンファンにとっては本当に夢のようなことだと思います。
今年から会場となった「武蔵野の森総合スポーツプラザ」は、おそらく現時点において世界でも最高レベルの体育館でしょう。黒を基調とした内装は、シャトルがよく見えるので打ちやすく、また高さはあるけど風はないという、選手にとってとてもプレーしやすい環境になっています。
こんな素敵な体育館で、2年後に東京オリンピックが開催されるのだと思うととても楽しみですし、日本人として誇らしい気持ちにもなります。
注目の日本代表選手たちの活躍、そして結果は?
桃田選手の独壇場だった男子シングルス

桃田選手の独壇場だった男子シングルス
とにかく今大会の桃田賢斗選手は絶好調でした。すべての試合で最高のパフォーマンスを見せてくれました。特にレシーブがとても良かったですね。今大会はラリーが長くなり、お互い我慢比べになりがちで、そんな時は仕掛け時を見極めるのがとても大事なのですが、桃田選手は焦らず我慢強くプレーして、決められそうな場面でもあえてラリーを続け、より決められる可能性の高い瞬間を待って攻撃していました。こういったプレーをするには我慢強さと体力的な強さ、そして心の余裕も必要になるのですが、今大会の桃田選手には、それを実現できるだけのポテンシャルがありました。決勝では、タイのコシット・フェトラダブ選手相手にストレートで圧勝。見事ジャパンオープン初優勝に輝きました。桃田選手には、2020年に向けてさらなる進化が期待できます。
惜しくも準優勝に終わった女子シングルス

惜しくも準優勝に終わった女子シングルス
決勝戦で、昨年の王者キャロリーナ・マリン選手(スペイン)に敗れた奥原希望選手でしたが、今大会通じてコンディションは良かったと思います。奥原選手も悪くはなかったのですが、マリン選手のパフォーマンスがそれ以上に良かったということです。ポイントは決勝戦での1ゲーム目。この接戦を落としたことが一番大きいですね。1ゲーム目の終盤で、長いラリーが続いて奥原選手の息が上がっていたのが気になりました。バランスの良いフットワークのできる選手なのに、あそこで息が上がって少しスピードが落ち、そこをマリン選手に突かれました。1回戦からの連戦で、少し疲れが溜まっていたのかもしれません。連戦や長いラリーを耐え抜くスタミナを付けることが、今後の課題になると思います。
今後に期待したい男子ダブルス

今後に期待したい男子ダブルス
期待された園田啓悟選手と嘉村健士選手のソノカムペアは、2回戦で対戦した韓国のキム・ウンホ選手とソ・スンジェ選手ペアの鉄壁なディフェンスを崩すことができずに残念ながら敗れました。低空戦が得意で、早いテンポや読みの上手さが持ち味のソノカムペアですが、今回は韓国チームのお家芸でもある固いディフェンスに阻まれ、相手を攻めきれなかったのが敗因だと思います。リズム良く早いテンポで攻撃できれば、自分たちのペースをつかめるペアなので、次回に向けて頑張って欲しいと思います。
フクヒロペアが見事優勝をつかんだ女子ダブルス

フクヒロペアが見事優勝をつかんだ女子ダブルス
優勝した福島由紀選手と廣田彩花選手のフクヒロペアは、元々我慢強いプレーができるペアなので、今大会のように、長いラリーが続く試合には強かったですね。特にインドネシアペアとの準決勝は、我慢比べのような長いラリー戦でしたが、粘りに粘ってなんとか競り勝ちました。決勝では攻守共に冴え渡っていたので、どのプレーも終始良いリズムで相手に攻撃させませんでした。攻撃のバリエーションも良く、スマッシュだけにこだわらず、ドロップショットも効果的に使えていたので、相手ペアも手に負えない感じだったのでしょう。見事な優勝でした。
渡辺/東野ペアが善戦した混合ダブルス

渡辺/東野ペアが善戦した混合ダブルス
混合ダブルスの決勝は、中国人ペア同士の戦いになりましたが、3回戦では日本人ペア同士の戦いも行われました。昨年も決勝まで進んだ保木卓朗選手が米元小春選手とペアを組み、渡辺勇大選手と東野有紗選手の、全英オープンで優勝したペアと対戦しましたが、この日本人対決を制したのは渡辺・東野ペアでした。しかし準決勝でワン・イルユ選手とファン・ドンピン選手の中国ペアに敗れてしまいました。相手ペアの、前に出てくる速さとパワーで押しきるプレーに圧倒された感じでしたね。しかし渡辺・東野ペアの実力が世界的レベルになっているのは間違いないと思います。ここ最近成長が著しく、常に世界のTOP4にいてもおかしくないペアになりました。
桃田賢斗選手(男子シングルス優勝)
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3年前はここに戻ってくることができるとは思えなかったのですが、ここに戻れたことを感謝していますし、皆さんに成長した自分の姿を見てもらえることができて、すごく嬉しく思います。2年後にオリンピックが行われる会場での初めての大会で優勝できて、ここは自分にとって縁起の良い体育館になりました。もちろんオリンピックは目標ですが、あまり先を見すぎずに、まずは次の試合に向けて、自分のできることにしっかりと取り組んでいきたいと思います。
福島 由紀/廣田 彩花ペア(女子ダブルス優勝)
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決勝はアジア大会で負けた相手だったので、そのリベンジ的な気持ちでコートに入りました。我慢勝負になりましたが、優勝できてホッとしています。ファンの皆さんの声援のおかげで優勝できたので、この勝利を次につなげていきたいです。(福島選手)
アジア大会では、相手ペアの早いタッチに対するレシーブに回ることが多かったのですが、今回はレシーブからうまく攻撃に持って行くことができました。ジャパンオープンは自分たちもワクワクしていた大会でしたので、ホームで開催されるこの大会で優勝できて本当に良かったです。(廣田選手)
マルクス・F・ギデオン/ケビン・S・スカムルヨ ペア(男子ダブルス優勝)
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自分たちのメインスポンサー(YONEX)の国で開催されたこの大会で、優勝することができて本当に嬉しいです。決勝の相手は何度も対戦したことのあるペアでしたが、相手ペアより自信を持ってプレーできたことが勝因だと思います。ここは素晴らしい体育館で、雰囲気も良いので落ち着いて試合ができました。(通訳)
種目 | 選手名 | 試合内容 |
---|---|---|
男子シングルス | 桃田 賢斗(日本) 2-0 コシット・フェトラダブ(タイ) | 21-14、21-11 |
女子シングルス | キャロリーナ・マリン(スペイン) 2-1 奥原 希望(日本) | 21-19、17-21、21-11 |
男子ダブルス | マルクス・F・ギデオン/ケビン・S・スカムルヨ(インドネシア) 2-0 リー・ジュンホゥイ/リゥ・ユチェン(中国) | 21-11、21-13 |
女子ダブルス | 福島 由紀/廣田 彩花(日本) 2-0 チェン・チンチェン/ジャ・イーファン(中国) | 21-15、21-12 |
混合ダブルス | ジェン・シーウェイ/ファン・ヤチョン(中国) 2-0 ワン・イルユ/ファン・ドンピン(中国) | 21-19、21-8 |
大会のレベルアップと共に、さらなる進化を遂げたジャパンオープン

今回「スーパー750」にレベルアップしたことに伴って、ジャパンオープンという大会自体が、世界的に見ても格式のある大会になったという印象を持ちました。出場してくる選手たちのレベルの高さはもちろんですが、会場の雰囲気や演出も、これまでのジャパンオープンとはひと味違う大会になったと感じました。
例えば選手たちの入場シーン一つをとっても、選手一人ひとりにスポットライトが当てられ、まるでスターが出てくるような演出がなされていましたが、こういった演出は見ていて楽しく、実際に観客の皆さんも喜ばれていましたし、実は選手たちにとってもモチベーションアップにつながります。特に上位選手たちは派手な登場の後でライトアップされたセンターコートに立つので、会場中の観客の皆さんが自分のプレーを見てくれているという気持になって、気分も乗っていつも以上の力を出すことができたのではないかと思います。
最終日の決勝前にはさまざまなイベントが行われました。
小学生の選手たちを招いての、日本代表選手たちとのエキシビジョンマッチも行われました。このような世界的な大会が開催される会場に子どもたちを招待するということはとても素晴らしく、子どもたちに夢を与えることだと思います。すべてのバドミントン選手にとって目標となる会場のセンターコートで、憧れの選手たちとプレーできる幸せは一生心に残る最高の思い出になるでしょう。実は私自身もかつてジュニアの頃に憧れの陣内貴美子さんとプレーできる機会があって、そのことはいまだに良い思い出として心に残っています。
また、パラバドミントンの日本代表選手たちによるエキシビジョンでは、普段あまり見る機会の少ないパラバドミントン選手たちのパフォーマンスが披露され、会場の皆さんにも、2年後に同じ会場で開催される東京パラリンピックへのアピールに繋がったのではないかと思われます。

当日会場では、本大会の冠スポンサーであるダイハツさんのブースが出ていましたので、私も少しお邪魔しました。ブースでは応援グッズやうちわが配布されており、抽選で日本代表選手のユニフォームが当たるイベントも開催されていました。ダイハツ社員が来場者に応援グッズを配布されている姿を見て、皆さんのバドミントンに対する熱意や愛を感じました。こういった人間味のあるサポートは、選手たちにとっても心強いことだと思います。
大会を終えて

今年のジャパンオープンは、国際大会としてのグレードが上がったことで賞金も増えました。それはもちろん大きなモチベーションになることですが、それよりも世界ランキングにおけるポイントアップの方が、選手たちにとって意味合いが大きいと思います。日本選手のみならずすべての出場選手にとって、この大会で良い結果を出して一つでもランキングを上げることが、2020年に向けての大きな目標でしたので、みんな素晴らしいパフォーマンスを出せていました。
2019年もこの会場でジャパンオープンは開催されます。来年は名実ともにオリンピックの前哨戦となる大会となりますので、そこでどんな戦いが見られるか、今からとても楽しみです。
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小椋久美子
【女子バドミントン元日本代表】1983年三重県生まれ。8歳のときにバドミントンを始める。2000年に全国高校総体でダブルス準優勝、01年の全国高校選抜でシングルス準優勝。三洋電機入社後の02年には全日本総合バドミントン選手権シングルスで優勝。その後、ダブルスプレーヤーに転向し、北京オリンピックで5位入賞、全日本総合バドミントン選手権では5連覇を達成。10年1月に現役を引退。