

「PERODUA MALAYSIA
MASTERS
2019 presented
by DAIHATSU」
大会レポート
by チャン・ペンスン選手
(マレーシア代表)
- 開催日時:2019年1月15日(火)~20日(日)
- 開催場所:アクシアタアリーナ
「PERODUA MALAYSIA MASTERS 2019 presented by DAIHATSU」は、2019年1月15日から20日にかけて、昨年に引き続いてクアラルンプールの「アクシアタアリーナ」にて開催されました。興奮と感動に包まれたこのワールドツアースーパー500の大会に、国内外から約1.5万人のファンが駆けつけました。特に地元マレーシアのファンは自国のバドミントン選手の活躍に熱い声援を送り、会場は熱気と興奮に包まれました。
マレーシア混合ダブルスのチャン・ペンスン選手が、今大会の模様や熱戦の様子を振り返ります。
「PERODUA MALAYSIA MASTERS 2019 presented by DAIHATSU」の大会レポート

大会は初戦から白熱した試合が繰り広げられ、会場は大いに盛り上がりました。特に嬉しかったのは、男子ダブルスや男子・女子のシングルス、そして混合ダブルスでマレーシアの選手たちが活躍してくれたことでした。
バドミントンが多くのファンに支持され、この国の代表的なスポーツとして高い人気を誇っていることを、大変心強く思っています。その結果、多くの若い選手たちが切磋琢磨し、やがて立派な選手に成長していく姿を見るのは、大きな励みになります。
世界トップ選手の試合結果
【男子シングルス】ソン選手の躍進

試合前、世界ランキング1位である日本の桃田賢斗選手と、前回優勝者のビクター・アクセルセン選手が優位とされていました。しかし、1回戦から予想に反する展開となり、桃田選手が西本拳太選手に21-15、14-21、22-20で敗れ、まさかの初戦敗退。一方アクセルセン選手は順当に勝ち進みましたが、準決勝で中国のチェン・ロン選手に敗れました。
結果的にタイトルは逃したものの、今大会はマレーシア選手勢にとって実りの多い大会でした。大会を通して多くのファンが、将来国際大会で活躍するであろう、この国の若手選手たちの成長を見届けることができました。マレーシアのチョン・ウェイフェン選手とイスカンダー・ズルカーナイン選手が序盤で敗退したため、男子シングルスは、リー・ズィージァ選手に委ねられました。ズィージァ選手は、西本選手とタノンサック・サエンソンボーンスク選手を破り、準々決勝まで駒を進めましたが、しかし、ズィージァ選手の積極的な攻撃もアクセルセン選手には通用せず、21-12・22-20のストレートで敗れました。結局第4シードのソン・ワンホ選手が、試合時間55分の21-17・21-19でチェン・ロン選手に勝利し、今年初のタイトルを見事獲得。優勝トロフィーと26,250米ドルの賞金を手にしました。
【女子シングルス】インタノン選手が本年度初のシングルスを制す

ゴー・ジンウェイ選手は地元ファンに人気のある選手です。今大会中彼女は自信に満ちた素晴らしいプレーを見せました。第3シードの山口茜選手、ツァン・イーマン選手、そして第5シードのヘ・ビンジャオ選手に対しても、ゴー選手は彼女らしいプレーで勝ち進み、見事ベスト4に進出しました。しかし、タイのラチャノック・インタノン選手には彼女の別次元ともいえるアグレッシブなプレースタイルに翻弄され、21-16・21-16のスコアで敗れ、準決勝で敗退しました。
決勝ではインタノン選手がオールラウンドな技術や守備範囲の広さや強烈なスマッシュで、スペインのキャロリーナ・マリン選手を圧倒しました。このタイのスター選手は、クアラルンプールで世界ランキング1位のタイ・ツーイン選手に2度勝利した勢いを持続。インタノン選手の強烈なベースラインへのショットやドロップショットなどのフェイントに、マリン選手は惜しくも敗れ、インタノン選手は本年度のシングルス初優勝となりました。今後のインタノン選手の活躍に注目です!
【男子ダブルス】インドネシアのトップペアが他を寄せ付けず

大会の準々決勝には、日本とマレーシアからそれぞれ3ペア、デンマークとインドネシアからそれぞれ1ペアが残りました。最終的に優勝者として表彰台に上がったのは、マルクス・F・ギデオン選手とケビン・S・スカムルヨ選手でした。 今大会のハイライトは、マルクス選手とケビン選手のペアと、ゴー・V シェム選手とタン・ウィーキョン選手のペアとの対戦でした。試合開始からポイントを奪い合い、白熱した戦いが繰り広げられましたが、4-1でインドネシアペアが勝利を収めました。アーロン・チア選手とソウ.W.Y選手ペアや、大会のファイナリストであるオン・ヨーシン選手とティオ・エーイ選手のペアのような有望なペアの活躍により、マレーシアの男子ダブルス勢の今後が期待されます。オン選手とティオ選手のペアは決勝まで勝ち進みましたが、激闘の末、強敵のマルクス選手とケビン選手ペアに敗れました。ゴー選手とタン選手ペアは、来年開催されるオリンピックへの出場が期待されています。
【女子ダブルス】安定の日本勢が制覇

トップシードの「フクヒロペア」こと福島由紀選手と廣田彩花選手ペアを筆頭に、全5ペアが出場した日本勢が活躍しました。
「フクヒロペア」の他、松友美佐紀選手と髙橋礼華選手ペアと松本麻佑選手と永原和可那選手のペアも準決勝に進出しましたが、インドネシアのグレシア・ポリー選手とアプリヤニ・ラハユ選手のペアが決勝に進出することで日本勢の上位独占を阻止しました。
ニ・ケタット・マハデフィ・イスタラニ選手とリッキ・アメリア・プラディプタ選手ペア、ユルフィラ・バーカー選手とジャウザ・ファディラ・スギアルト選手ペアのような有望なインドネシアペアの躍進は、今後日本勢への対抗勢力となるでしょう。
決勝では「フクヒロペア」とポリー選手とラハユ選手のペアが、互いにありとあらゆる力を出し尽くし、3セットを戦いました。この試合は、技術と戦術面でポイントを奪い合う接戦となりました。両ペアが速攻や強烈なスマッシュ、またネットプレーやラリーといった様々なプレーを混ぜた戦略で、相手の出方を探りながら戦いを進めていきました。
試合時間75分にも及んだ長期戦を、「フクヒロペア」が18-21・21-16・21-16で勝利し、見事27,650米ドルの賞金を獲得しました。
【混合ダブルス】日本勢優位も、タイ勢の躍進に今後注目!

パートナーであるゴー・リューイン選手と私は、ペアを組んで以来、周囲の期待に応えるために努力を重ねてきました。タイ・マスターズでの成功の後も、新たな挑戦のためにモチベーションを維持し続けることができました。その結果、今大会で私たちはベスト4に残るという大きな成果を得ることができました。ただ、準々決勝で、同じマレーシアのゴー・スンファット選手とライ・シェヴォン・ジェミー選手のペアと戦わなければならなかったのは少し残念でした。
日本のペア、特に渡辺勇大選手と東野有紗選手のペアは、精神、肉体、戦術的に進化し続けていて、その結果彼らが優勝し、トロフィーを手に入れました。
またもう一組注目のペアは、渡辺選手と東野選手ペアと決勝で戦った、デチャポン・プアヴァラヌクロー選手とサプシリー・タエラッタナチャイ選手です。タイとインドネシアの若いペアの台頭により、混合ダブルスでのトップ争いは、今後ますます熾烈となることでしょう。
福島由紀選手/廣田彩花選手ペア(女子ダブルス優勝)
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インドネシアのペアとの試合は常に厳しい展開になります。お互いに相手の試合運びを知りつくしているからです。今回、第一セットを失った後も集中し、相手のミスを誘うよう戦いました。相手ペアは私たちの出方を予測してプレーをしてきたので、厳しい試合展開となりました。そこで試合のペースを上げ、相手のミスを誘うためにプレースタイルに常に変化をもたせ、やっと勝利することができました。
ソン・ワンホ選手(男子シングルス優勝)
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決勝戦の相手チェン・ロン選手の戦術は予測しづらく、さらに、相手のプレーを読む能力が優れているので、勝つことがとても難しいです。彼とは何度も試合をしてきましたが、今年の初めにクアラルンプールで優勝した時の試合は本当に素晴らしいものでした。試合中はあらゆる策を講じて、チェン・ロン選手のミスを誘うことに集中しなければなりませんでした。私にとって2019年の最初の大会となる今大会で結果を出せたことを、とても嬉しく思っています。
種目 | 選手名 | 試合内容 |
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男子シングルス | ソン・ワンホ選手 (2-0) チェン・ロン選手 | 21-17,21-19 |
女子シングルス | ラチャノック・インタノン 選手(2-0) キャロリーナ・マリン選手 | 21-9,22-20 |
男子ダブルス | マルクス・F・ギデオン選手/ケビン・S・スカムルヨ選手 (2-0) オン・ヨーシン選手/ティオ・エーイ選手 | 21-15,21-16 |
女子ダブルス | 福島由紀選手/廣田彩花選手 (2-1) グレシア・ポリー選手/アプリヤニ・ラハユ選手 | 18-21,21-16,21-16 |
混合ダブルス | 渡辺勇大選手/東野有紗選手 (2-0) デチャポン・プアヴァラヌクロー選手 /サプシリー・タエラッタナチャイ選手 | 21-18,21-18 |
本大会の総評と2020年にむけて

今年の「PERODUA MALAYSIA MASTERS 2019」は、来年の大会に繋がる大きな成果を残しました。MALAYSIA MASTERSは、昨年からダイハツが協賛することによって、高い認知度と関心を集めることになり、より魅力的な大会となりました。また表彰式にはマレーシア副首相がトロフィーのプレゼンターとして参列し、本大会が名誉ある大会であるとあらためて注目を集めました。
二大会続けて大盛況に終わった本大会は、来年に向けてより一層素晴らしい大会となることでしょう。会場を盛り上げるための演出や装飾、ショーアップした試合や選手たちの紹介も大会を彩りました。最も興味深かったのは、世界のスター選手たちが、大会スポンサーのプロドゥアのロゴが入ったユニフォームを着た子供たちと一緒にアリーナに登場したことです。このような演出は、子供たちや若者たちによるバドミントン選手への憧れ、そしてこの競技への関心を大いに抱かせることに繋がるでしょう。
さらに興味深かったのは、決勝戦の試合の合間に行われた「シャトルを箱に入れよう!」というゲーム。このゲームに参加したファンがセンターコートに入ってサーブを箱に入れるチャレンジをすることで、決勝戦の雰囲気を味わうことができるという貴重な機会が設けられたことです。
また、スター選手とのフォトセッションやサイン会、交流イベントなど、バドミントン界のアイドル選手達に間近で会うことができたため、ファンたちは長蛇の列を作りました。会場でスター選手に会えるという、ファンにとってはまさにエキサイティングな一週間となりました。
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チャン・ペンスン選手
(マレーシア混合ダブルス選手)1988年4月27日、ペナン島のジョージタウン生まれ、現在は混合ダブルスを専門とするバドミントン選手。パートナーのゴー・リューイン選手とマレーシアの混合ダブルスでトップ選手となり、世界ランキング10位内の常連。マレーシア混合ダブルス勢では初のオリンピック参加者で、2016年のリオ・オリンピックでは銀メダルを獲得。他に、2010年のコモンウェルス・ゲーム、バドミントン・アジアチャンピオンシップ等にて優勝経験がある。ゴー選手とペアを組み、バンコクで行われたタイ・マスターズにて優勝。