8月10日から3日間にわたって、3年ぶりに熊本県八代市の「八代市総合体育館」及び「八代市東陽スポーツセンター」で開催された『第19回ダイハツ全国小学生ABCバドミントン大会』。
決戦の地となった八代市には、各都道府県で行われた予選会を勝ち抜いて来た代表選手が集結。その熱戦の様子を、女子バドミントン元日本代表の小椋久美子さんがレポートします。
3年ぶりに熊本・八代市で開催!

ABCバドミントンの全国大会は、2007年から「八代市総合体育館」で開催されていたのですが、2016年に起きた熊本地震の影響でこの2年間は別の場所で開催されました。しかし今年は3年ぶりにここ八代市で開催されるとあって、地元の方々も大いに盛り上がりました。
実はこの体育館(八代市総合体育館)は、私にとってとても懐かしく、思い出深い場所です。ジュニア時代からこの体育館では何度も試合をしましたし、嬉しい思い出や悔しい思い出もたくさんあります。今日改めてこの体育館に入ったとき、「ああ、久しぶりに帰って来たな」というノスタルジックな気持ちになりました。私に限らず同じ世代のバドミントン選手にとって、ここは皆同様に思い入れのある体育館だと思います。
元々熊本はバドミントンの強豪県で、特に八代市は有名選手を数多く輩出しています。バルセロナ五輪日本代表の陣内貴美子さんや、「ソノカムペア」の園田啓悟選手もここ八代の出身です。熊本は昔からバドミントンが盛んな土地なので、地元の方々にも熱狂的なファンが多く、心のこもった熱い応援をしていただけます。
今回この“バドミントンが愛されている場所”に帰って来て、私もかつてジュニアの頃にここでプレーしていたときの気持ちを思い出し、小学生選手たちの応援に思わず力が入ってしまいました。
小椋さんが注目した、この選手&この試合!
さすが全国の予選を勝ち抜いて来ている選手ばかりなので、各グループそれぞれレベルの高い試合を観ることが出来ました。
男子Aグループの齊藤礼選手(福岡県代表)は、攻撃的なプレーヤーですが、レシーブもとても良かったです。相手のミスを誘発するようなレシーブが出来ていましたし、とにかくスピードが速いので、試合展開もスピーディーに運べていました。単純に攻める、守るだけではなく、繋ぐことも出来るので、終始自分主導でゲームを作れていましたね。相手にプレッシャーを与えるプレーの出来る選手です。
男子の試合では、「ネット前を制するものは、試合を制する」と言われているので、もう少しネット前でも相手にプレッシャーをかける駆け引きを覚えると、さらに良くなると思います。
また、女子Aグループの樋口吹羽選手(徳島県代表)も良かったですね。とにかくパワーのある選手で、上から打ち下ろすショットが決まっていました。女子では珍しくプッシュが打てるし、質の良い短めのドロップも上手いなと思いました。基本に忠実なプレーをしていて、ちゃんと足を入れてしっかりと打てているし、クロスにも引っぱれるパワーもある。読みにくいショットも打てるし、相手に怖いと思わせることが出来るプレーヤーです。プレーの節目節目でスピードを変えることが出来ると、彼女はもっと強くなると思います。
実は私が今大会でもっとも印象に残った選手は、男子Aグループの澤田修志選手(北北海道代表)です。優勝した齊藤礼選手に準決勝で惜しくも敗れ、結果は3位だったのですが、5年生ながら6年生相手にとても良いプレーをしていました。昨年はBグループで優勝して、私も注目していたのですが、天性のセンスを感じられる選手で、テクニックだけでいうと今大会NO.1かもしれません。ラケット面の使い方が上手くて、どこに来るのか分からないショットを打てる選手です。体も大きくなって、昨年の課題であった体のブレもなくなっているように思います。今は少し手打ちが多いのですが、もっとしっかりと体を入れて打つ練習をすれば、まだまだ伸びる選手ですので、来年に向けてさらなる成長に期待しています。
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齊藤礼選手
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樋口吹羽選手
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澤田修志選手
大会を振り返って

今大会に参加して改めて感じたことは、今の子どもたちはとても良い環境でプレー出来ているなということです。まず会場のすべてのコートにコートマットが敷いてあるということにびっくりしました。環境の整った体育館で思う存分プレーに集中出来る。これは選手たちにとって素晴らしいことではないでしょうか。今回出場した選手たちには、このABC全国大会に参加したことを誇りに、これからも一生懸命バドミントンに向き合って欲しいと思います。
小学生選手へのメッセージ
今世界で活躍している「タカマツペア」の高橋礼華選手も松友美佐紀選手も、山口茜選手も奥原希望選手も、そして桃田賢斗選手もこのABC全国大会に出場しています。皆こういった全国大会を経て世界に飛び立っているので、まずはここが皆さんの目指すべき場所。今あなたたちの先輩は、世界を相手に一生懸命頑張っています。彼らに続く未来の日本バドミントン界の担い手として、皆さんの活躍に大いに期待しています。
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男子Aグループ優勝
齊藤 礼
岡垣ジュニア(福岡県)- 優勝した率直な感想は?
- 去年は5年生で出場して、6年生に全然勝てなかったのですが、今年は同じ6年生同士での試合で優勝できて嬉しいです。
- 今の気持を伝えたい人は?
- 監督です。
- 優勝できた理由は?
- どんどん攻めていったことです。
- 次の目標は?
- 次の全国小学生バドミントン選手権大会でも、決勝に進んで2−0で勝ちたいです。
- 好きな選手は?
- 西本拳太選手。
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女子Aグループ優勝
横内 美音
甲府ジュニア(山梨県)- 優勝した率直な感想は?
- 小学校最後のABCだったので優勝目指して頑張りました。本当に優勝できてうれしいです。
- 今の気持を伝えたい人は?
- 家族みんなと、私を育ててくれた人たちです。
- 優勝できた理由は?
- 相手の身長の高さを考えて、シャトルを届かないところに打つことができたことです。
- 次の目標は?
- ここで終わりではないので、次の全国小学生バドミントン選手権大会でも優勝したいです。
- 好きな選手は?
- 奥原希望選手。
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男子Bグループ優勝
田上 幹太
TTBC(熊本県)- 優勝した率直な感想は?
- お父さんとABC優勝の目標を立てていたので、優勝してホッとしました。
- 今の気持を伝えたい人は?
- お父さんです。
- 優勝できた理由は?
- 去年までは競ってから焦ってしまったけど、今年は気持ちも強くなったので、それが勝ちにつながったと思います。
- 次の目標は?
- 12月の全国小学生バドミントン選手権大会でも優勝したいです。
- 好きな選手は?
- 桃田賢斗選手。
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女子Bグループ優勝
溝尾 花奈
日高地区バドミントン少年団(南北海道)- 優勝した率直な感想は?
- 初めて優勝できて、とても嬉しかったです。
- 今の気持を伝えたい人は?
- お母さんと、お姉ちゃんと、チームのみんなです。
- 優勝できた理由は?
- 真剣に練習して、苦しいことでも全力で取り組めたこと。それと監督たちの指導のおかげです。
- 次の目標は?
- もっと強くなって、次の全国小学生バドミントン選手権大会でも優勝したいです。
- 好きな選手は?
- 奥原希望選手。
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男子Cグループ優勝
篠原 康輔
中萩JBC(愛媛県)- 優勝した率直な感想は?
- うれしかったです。
- 今の気持を伝えたい人は?
- 桃田賢斗選手に伝えたいです。
- 優勝できた理由は?
- 練習をいっぱいしたからです。
- 次の目標は?
- 次のABCでも優勝したいです。
- 好きな選手は?
- 桃田賢斗選手。
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女子Cグループ優勝
板橋 ゆい
仙台大和ジュニア(宮城県)- 優勝した率直な感想は?
- とても嬉しいです。
- 今の気持を伝えたい人は?
- コーチと、ジュニアの仲間です。
- 優勝できた理由は?
- 最後まであきらめずに頑張れたことです。
- 次の目標は?
- 来年は年上のグループになるけど、相手に向かっていけるように頑張りたいです。
- 好きな選手は?
- 大堀彩選手。
中口直人さん(日本小学生バドミントン連盟 副理事長・強化部長)
大会の雰囲気について
会場が鮮やかな赤に彩られ、華やかになったと感じています。
また、大会ポスターに優勝した選手達の写真が使われることで、選手たちの意気も上がったように感じます。
出場選手たちへのメッセージ
今までの大会に比べ、Cグループのメンタリティ(考え方)の高まりが感じられました。
選手たちは気持ちが揺らいでもベンチと一体となって戦えるようになってきたように思えます。
比べてA・Bグループは、選手の未だ幼い自立心がプレーを抑え気味にしているように感じられました。
A・Bグループ共に上のレベルにチャレンジしていけるメンタリティがもっと欲しいところです。
今後の目標や課題について
オリンピック競技に参加していること、そのスタート地点である小学生連盟を支援して頂けることに強い使命感をもって、世界で活躍するチャレンジ精神を伝えていきたいと考えています。
会場レポート

会場内に設置されたダイハツさんのブースでは、スタッフの皆さんが笑顔で、選手やチーム関係者の方々に応援グッズやうちわ、ドリンクを提供されていました。
ダイハツさんのサポートが入って、大会自体がとても華やかになりましたね。保護者の方々は、このような華やかな大会で、自分の子どもたちが活躍出来ることを誇らしく感じているはずです。ダイハツさんのサポートのおかげで、選手たちはもちろん、親御さんにも夢を与える大会になったと思います。
パラバドミントン代表選手たちによるデモンストレーション!
8月10日の開会式後に、パラバドミントンの日本代表選手たちを招いてのデモンストレーションが行われました。当日会場に招かれたのは、男子WH1代表の長島理選手と大濱真選手、女子WH2代表の山崎悠麻選手とWH1代表の里見沙李奈選手の4選手。4人は小学生選手たちが見守る中、特設コートにおいてパラバドミントンのルールについて説明しながらのデモンストレーションを行いました。車椅子を駆使しての見事なプレーに、小学生選手たちや観客席からは大きな歓声が上がりました。